銀嶺器 #01
2000年の12月。私はハーレーダビッドソンの事業に関わる視察の為、ドイツ南部の古都 : ヴェルツブルグと言う街におりました。中世の頃よりキリスト教の司教領として栄えたこの街は、あの有名なロマンチック街道の起点の街としても有名です。滞在中、ドイツ人の友人夫婦に案内され街の中心にある教会の広場に赴きました。クリスマスシーズン真っ只中のドイツ… その広場は非常に多くの屋台が立ち並び煌びやかな装飾の下大いに賑わっておりました。クリスマスを迎える為の飾り付けやオーナメントを売るお店。子供の為のおもちゃや工芸品を売るお店。また焼きソーセージを売る屋台、また12月のドイツは氷点下の厳冬でもありますので、暖を取る為のこの季節の名物 : グリューワイン (ホットワイン ) を売る屋台が立ち並んでおりました。
物珍しげに広場の中の屋台を色々と覗いておりますと、何やら骨董品を売っている屋台に遭遇。その中に我々日本人としては見慣れた一対の陶器の小鉢が置かれおりました。日本で見れば何の変哲もない小鉢でありますが、しかしここはドイツ。しかも辺り一面がクリスマスモード一色でありますから、そんな完全にアウエーの状況下で見る陶器の小鉢はかなりの異彩を放っておりました。何とも複雑な心持ちでその一対の小鉢を眺めておりますと店主と思しき人物が私に近寄り『あなたは日本人ですね。この小鉢はいつの頃から私の元に有ります。私は毎年この広場に屋台を出して骨董品を売っているのですが、この小鉢は今年初めて商品として展示しました。 いつか別のドイツ人の手に渡りこの国を流浪するのがこの小鉢の運命だと思っていましたが、あなたにお目に掛かり、私はたった今、新鮮なアイディアを思い付きました。実はこの小鉢はずっと日本に帰りたがっていた事を私は知っています。どうです、あなた、日本に連れて帰ってやっては頂けませんか?』
その小鉢の素性も価値も分からぬまま、店主の言葉に何やらの使命感の様なモノを覚えつつ、多分日本で購入するよりは相当に高額な代金をその屋台の店主に支払った後、この一対の小鉢は日本に戻って来ました。それ以降、ずっと私の傍におり、見るに付けあの夜の事を思い出しておりましたが、2年程の前のある晩。私もあの時の店主と同じ様に突然新鮮なアイディアを思い付きました。まさに無常。。。銀嶺の特殊な液を介し、この一対の小鉢は生まれ変わりました。
- 特殊錯体銀仕上げ
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◯ 表面部分 : 銀嶺艶有り仕上げ。
◯ 器の内側にも銀嶺施工を施しております。
※ 一つは深い銀色の発色。もう一つはやや青みがかった銀色の発色となりました。 - 詳細
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◯ 陶器
◯ 直径 : 10cm
◯ 高さ : 6cm
◯ 電子レンジ / オーブン / 食器洗浄機のご使用は不可
無常とは、仏教における中核教義の一つであり、三相のひとつ。生滅変化してうつりかわり、しばらくも同じ状態に留まらないこと。非常ともいう。 あらゆるものが無常であることを諸行無常といい、三法印の1つに数える。
-ウィキペディア